非法同居

男女が婚姻手続をしないで一緒に暮らすことを、中国では「非法同居」と呼びます。
そして、「非法同居」が公安(警察)にバレると処罰される、罰金を科される、と思っている中国人が結構います。

僕もかつて中国人からそのように聞かされ、
「これが社会主義国というものなんだなぁ・・いろいろ不自由なんだなぁ・・怖いなあ」
と感心した覚えがあります。

が、実はこれは全くのデマで、結婚していない男女が同居(内縁、同棲)することは中国でも禁止されていませんし、処罰や罰金もありません。

実情として、「非法同居」をしている中国人は結構多いです。「非法同居」に至る経緯は、普通のいわゆる「彼氏彼女の同棲」も多いですが、そのほか中国特有の事情として、たとえばよくあるのは、

1.農村から都市部への出稼者どうしで結婚して戸籍地以外で世帯を持つ場合、婚姻にまつわる各種手続が煩雑で面倒くさい。このため、外見上は夫婦として暮らしているのに婚姻手続をしていないカップルが結構ある。

2.中国の法定婚姻年齢は中華人民共和国建国後に2度にわたり引き上げられた。中華民国時代の男性18歳、女性16歳から、建国翌年の1950年には男性20歳、女性18歳に、1980年には男性22歳、女性20歳になった。これが中国人の元来の習俗にあわなかったため、とくに農村部において若年者の事実婚が広くおこなわれた。

3.中華民国時代は結婚の際に役所への届け出は不要だった。よって、高年齢層はそもそも誰も結婚登記をしていなかった。

などなど、事情はさまざま。

いずれも相続などの場面では問題が生ずることが予想されますが、かといって、処罰の対象になるわけではありません。


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ちなみに、中国では、結婚していない「非法同居」の男女が子どもを作ると、計画生育政策(人口抑制政策・ひとりっ子政策)のからみで罰金を科されます。罰金の額は、地方により違い、所得額によっても違いますが、一般にかなり痛い金額です。

余談ですが、日本人が中国人女性との間に子どもを作った場合でも、婚姻関係がなければ罰金を科されます(中国籍を取得する場合)。知人で実際に支払った人がいます。おおむねボーナス一回分くらいの金額になります。

もしかすると、この「計画生育政策上の罰金」が誤って伝わり、「非法同居そのものに罰金が科される」という誤解が広まったのかも知れない・・・これは僕の勝手な想像です。


東莞をめぐるデマ

さて、この「非法同居」ですが、ここ2週間ほど、東莞の風紀取締を背景に、「デマ」のネタとして話題に上っているようです。
デマの舞台は例によって微博(中国版ツイッター)です。


faifayaoyan.jpg


(訳文)
結婚証明書を所持せずに同居していると非法同居罪になる。大朗鎮、塘厦鎮などですでに7000人が逮捕された。虎門鎮では結婚証明書がないと3ヶ月拘留される。
(※訳注 結婚証明書というのは、民生局で婚姻手続をすると発行される書類で、夫婦関係を証明するもの。)



賃貸住宅の掲示板にこういう貼り紙をしている大家さんもいたとのこと。


feifatong.jpg



今回の一斉取締では、警察は東莞市内の賃貸住宅を広汎に立入検査しています。なので、自宅まで警察が検査にやってくる、と慌てた人多数のよう。


このデマに対し、東莞市の公安局は、「非法同居」を処罰することはないので、デマに惑わされないでください、と公式に表明しました。なかなか素早い反応です。


feifagdga.jpg


警察は、「同居している男女が売買春でなく「情侶」(恋人・カップル)関係であることが確認できれば問題ない」と地元メディアにコメントしています。

警察がどういう方法で「恋人・カップル関係」を認定するのか知りませんが、国際結婚の際に入管に説明するような方法でいいんでしょうかね。出会った経緯、交際の状況、などがちゃんと説明できて、あとは2人で撮った写真などがあれば、交際の実態があると認めてもらえるんでしょうか。

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東莞の嵐はまだまだ静まらず。
今後も、どういう新たなデマが飛び交い、どういうドタバタが展開するのやら。


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